当社グループは、気候変動の視点をより一層取り入れた経営計画を策定し実行していくことが、地球や社会、そして我々の持続的な発展に不可欠であると認識しており、2021年5月に「2050年カーボンネットゼロ」を宣言しております。この度、その実現に向けた取り組みと工程をとりまとめたロードマップを、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)におけるシナリオ分析や、外部環境・内部環境の分析等を基に策定しました。
GHG排出目標と削減量
エネルギーの安定供給の責任を果たしつつ、脱炭素エネルギーへの転換やネガティブエミッション技術の活用によって、自社操業に伴う排出量(Scope1+2)の2030年30%削減( 2013年度比)を目指します。また、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献すべく、2050年にはScope3を含めたカーボンネットゼロを目指します。
<Scope1+2削減目標>
<Scope3への取り組み>
「未来を変えるエネルギー」に、ステークホルダーとともに取り組むことで、脱炭素社会の実現に貢献します。
- グリーン電力サプライチェーン強化
- SAFをはじめとするバイオ燃料の開発・供給
- 水素サプライチェーンやカーボンリサイクル製品への取り組み
カーボンネットゼロに向けた重点取組テーマ
脱炭素エネルギーへの転換やネガティブエミッション技術に取り組むとともに、未来を変えるエネルギーに取り組むことで、社会全体のカーボンニュートラルに貢献してまいります。
ネットゼロに向けた基本的な考え方と工程
当社グループのこれまでの取り組み
当社グループは、石油を扱う企業として20年以上前から環境問題を強く意識した経営を行ってきました。 当社グループの環境への取り組みは、1994年の地球環境委員会の立ち上げにはじまり、2001年には現在の「地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざす」という企業理念を制定し、その理念の基、エコカード基金の設立や風力発電事業への参入など、事業活動を通じた環境への取り組みを進めてきました。
脱炭素に資する取り組み
当社グループは、2013年に製油所の競争力強化を目的とした供給体制の再構築により、坂出製油所を閉鎖しました。この閉鎖によるCO2排出削減インパクトは、年間約100万トン程度です。2013年以降、現在の3製油所体制で高稼働を維持することによって、安定供給の責任を果たしてきました。
また、省エネ施策の実施だけでなく、高効率化を進め、排出原単位の低減(10年間で7%削減)にも取り組んでいます。
当社グループのGXリーグ目標
GXリーグ第1フェーズにおける当社目標
当社グループは、GXリーグに参画しています。GXリーグにおいて設定した排出削減目標は、下記のとおりです。GXリーグ目標が当社ロードマップの目標と異なる数値である要因として、以下2点をご説明します。
1)GXリーグと当社ネットゼロ目標の算定方法の違い
2)2030年目標設定における考え方の違い
1)当社ネットゼロ目標とGXリーグ目標の算定方法の違い
当社グループのネットゼロ目標におけるGHG算出方法と、GXリーグにおける算出方法は、以下3つの違いがあります。
- 国外排出量:当社ネットゼロ目標では国外排出量を計上
- 他者へ供給した電力・熱:当社ネットゼロ目標では控除(SHK制度※)
- 削減貢献量:当社ネットゼロ目標では社会全体への削減貢献量を計上
2)2030年目標設定における考え方の違い
当社グループでは、カーボンネットゼロへのロードマップを公開後も、更なる削減施策を積み上げられないか、あらゆるポテンシャルの検討を行っています。GXリーグの目標を提出するにあたり、2030年目標は現在検討を進めている削減ポテンシャルも加味した目標値(21%)を設定しました。
GXリーグにおける目標だけでなく、このような削減施策の検討に取り組み続けることによって、当社ネットゼロに向けたロードマップもアップデートしていく予定です。
※SHK制度:地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度
ネットゼロに向けた取り組み【原油開発/精製・石化】
外部環境の認識
原油開発/精製・石化事業においては、脱炭素に向けた一層の取組が求められています。ネガティブエミッション技術については、分離・回収・利用の技術開発による低コスト化が進められ、2030年には、普及実現が見通されています。
水素については、製造の実証等が進められ、さらなる低コスト化が求められています。アンモニアについては、早期の利用に向けた取組が進んでいます。
次世代燃料については、海外での実用化が進みつつあり、今後、国内でも普及が目指されています。
低・脱炭素化に向けた取り組み
① 脱炭素エネルギーへの転換
当社グループは、燃料転換(LNG、水素・アンモニア等の活用)や再エネの導入、省エネ等によって、スコープ1+スコープ2排出量を削減します。
コスモ石油販売の運営する全てのSSの使用電力について、実質再エネ電力への切替を進めています。
② ネガティブエミッション技術の活用(CCS/CCUS、CO2-EOR等)
当社グループが利権を有する油田等での、CO2-EORの活用可能性を検討していきます。また、主要な装置におけるCO2回収とその活用(CCS/CCUS)を検討していきます。
尚、当社グループは、アブダビ国営石油会社と、脱炭素化に貢献する技術の模索および、アブダビ首長国におけるCCS/CCUSの実行可能性を評価するための共同調査を開始することに合意し、覚書を締結しています。
③ 次世代エネルギー/原料への取り組み
当社グループが有する水素製造や取り扱いに関するノウハウを活用し、水素ステーション事業、水素製造等に関わるエンジニアリング、水素サプライチェーン構築に向けた国内受入基地及び海外ソースの活用等を検討していきます。
尚、当社グループは従来より深い関係を有するUAEを拠点とするマスダール社と、洋上風力・水素・アンモニアなど脱炭素分野での協業検討に関する覚書を締結しています。
また、当社グループは、NEDOの助成事業において、「国産廃食用油を原料とするバイオジェット燃料製造サプライチェーンモデルの構築」を提案し、採択されました。当該事業を通じて、廃食用油を原料としたバイオジェット燃料製造サプライチェーンモデルを実証・構築し、2025年までに本格的なバイオジェット燃料供給開始を目指します。
グループ会社の丸善石油化学が取り組む、ケミカルリサイクル技術が、NEDOのグリーンイノベーション基金事業に採択されました。当該事業を通じて、2030年までにケミカルリサイクル技術の確立を目指します。
さらなる取り組みとして、カーボンリサイクル製品(合成燃料・化学品)の供給をも検討していきます。
ネットゼロに向けた取り組み【再生可能エネルギー事業】
外部環境の認識
2021年に「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定され、2030年度の削減目標を踏まえ、需給両面における課題克服を野心的に想定した場合、2030年度には電源構成の36~38%を再エネが占めるという見通しが示されました。なかでも、太陽光発電や陸上風力発電については今後も継続的な導入が期待されているとともに、洋上風力発電の導入拡大が期待されています。
また、カーボンニュートラル社会を見据え、企業や自治体を中心に脱炭素化に向けた取組みが拡大しています。なかでも再生可能エネルギー電力に対するニーズは高まっており、更なる再生可能エネルギー電源の開発及び供給が期待されていると認識しています
低・脱炭素化に向けた取り組み
① 陸上/洋上風力発電事業
グループの再生可能エネルギー事業の中核を担うコスモエコパワー株式会社を中心に、陸上風力発電所の開発、設計・建設、操業、メンテナンスまで一貫して自社で実施できる体制を構築しています。また、今後導入拡大が期待される洋上風力発電事業を進めています。
② 電力小売事業(再生可能エネルギー電力の供給)
当社グループの持つ発電所で発電された再生可能エネルギー電力を個人・法人向けに供給しています。
③ その他再生可能エネルギー
当社グループが有する技術やネットワークを活用した、太陽光・地熱・バイオマス発電の展開を検討しています。
④ コスモ・ゼロカボソリューション
当社グループのアセットを結集し、再エネ及びEVの導入・活用に関するサービスをワンストップで提供。法人や自治体の皆さまの脱炭素化を支援・促進します。
ネットゼロに向けた取り組み【モビリティ事業】
外部環境の認識
政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」をうけ、各法人や自治体におけるEVをはじめとした次世代車に対する需要が高まっていると認識しています。
低・脱炭素化に向けた取り組み
EV等の導入・効果的な活用をワンストップで支援
従来から取り組んでいたカーリース事業にEVを積極的に取り入れ、気軽に利用できるEVカーシェアの提供も開始しました。
重ねて、当社の再エネ事業におけるアセットを活用することで、脱炭素化への取り組みをトータルサポートします。
① 「コスモMyカーリース」でのEV提供
「コスモMyカーリース」や「やさしいカ―シェア」の仕組みを通じたEVの提供が可能となりました。これらのEVに当社再エネ由来電力を供給することで、ゼロエミッションのEV社会の実現を図ります。
② 水素ステーション事業
既存アセットを活用し、2024年に水素ステーションの1号店を開所、トラック向け水素ステーションを展開し、水素サプライチェーンへの参入に取り組んでいます。
③ SSへのEV用急速充電器の設置
当社系列サービスステーション(SS)へのEV用急速充電器の設置及び関連サービスの開発を推進していきます。
ネットゼロに向けた取り組み【地域創生への貢献】
外部環境の認識
「ゼロカーボンシティ」を表明する自治体が広がる中で、様々な脱炭素への打ち手が求められていると同時に、各自治体に所属する企業においても自発的な脱炭素取り組みが求められていると認識しています。
低・脱炭素化に向けた取り組み
エネルギー・モビリティ領域を軸とした地域脱炭素貢献
モビリティ、再生可能エネルギー、分散型エネルギー等の分野で地域活性化への貢献及び次世代事業に繋がるプロジェクトの検討をしてまいります。また全国に広がるサービスステーション(以下、SS)を活用した地域脱炭素貢献の取り組みも進めます。
① 会津イノベーションオフィスの開設
「スマートシティ会津若松」におけるICT・環境技術等を活用した地域モデル創出の取り組みとして、会津若松にイノベーションオフィスを開設しました。エネルギー・モビリティ領域を事例分析し、地域ニーズの把握・事業への反映を目指します。