自然資本・生物多様性の保全に関する考え方
コスモエネルギーグループは、石油製品の開発や提供に取り組む一方で、再生可能エネルギーの導入や生物多様性の保全、自然資本の持続的利用など、かけがえのない地球環境を次の世代へ残すためのさまざまな活動に力を入れています。
当社グループ理念「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」および、サステナビリティの基本的な考え方である「地球環境との調和と共生」の実現に向け、「地球温暖化対策の取り組み」「環境負荷の最小化」「水環境の保全」「土壌環境対応の徹底」に取り組むことを、企業行動指針に示しています。また、環境と調和した事業活動の推進について環境方針を制定しています。
環境方針において、「自然資本・生物多様性の保全に関する基本的な考え方」を定めており、この方針のもと、環境保全の推進、資源の有効利用を目的とした生物多様性の保全と改善、自然資本の持続的利用に取り組んでいます。
これまでも、当社グループは気候変動対策、汚染防止・化学物質管理、資源循環・省資源などの環境負荷低減活動により、自然環境に影響を与える要因の低減を進めてきました。
これらの取り組みを一層推進するため、経団連生物多様性宣言イニシアチブおよび生物多様性のための30by30アライアンスに参加し、事業活動のあらゆる分野で生態系の保全や生物多様性に配慮した取り組みを進めています。
また、TNFDフォーラムに参加し、これまでの活動をTNFDのフレームワークに照らし合わせて整理し開示を進めるとともに、バリューチェーン全体での自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価することで、生物多様性を含む自然環境の保全に取り組んでいます。
外部団体との連携の詳細は、「賛同・支持するイニシアチブ、参画団体」をご参照ください。
TNFD(自然資本関連財務情報開示タスクフォース)への対応
TNFDによる提言は、自然関連の依存と影響に関するリスクと機会が、自社の事業戦略、財務計画等に与える影響についての説明を求めています。合わせて、これらの評価や管理に必要な指標についても、開示を求めています。
当社グループでは、TNFDへの対応として、2023年9月に公表されたTNFDの提言v1.0に基づき、事業と自然との関係性を把握するとともに、事業影響の試行的なリスク評価・分析を行いました。
TNFD が設定する自然関連の重要課題、事業拠点(地域性)、上・下流のバリューチェーンを考慮した評価および管理に必要な指標について、既存の環境データを元に、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(自然関連課題を評価・管理するための評価手法)に沿って、試行的に自然関連の依存と影響のリスク評価を実施しました。
自然関連課題に関するガバナンス
取締役会による監視(監督)体制と経営者の役割
当社は、代表取締役社長を議長とする「サステナビリティ戦略会議」を開催し、自然関連課題を含む重要な業務や方針に関する事項の審議を行っています。グループ全体に大きな影響があると判断された事項ついては、取締役会に付議・報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制としています。
サステナビリティ戦略会議での議題や取締役会への報告については、「サステナブル経営の推進体制」をご参照ください。
ステークホルダーに関するガバナンス
当社グループは、自然との共生を図るうえで、先住民族や地域住民など、その土地の自然破壊や環境汚染等による負の影響を受ける方々とのエンゲージメントが不可欠であると認識しており、自然関連のリスクと機会の分析において重要なテーマの一つとしています。
■先住民族や地域住民などの人権に関する考え方・取り組み
当社グループは、「先住民族の土地・権利の尊重」を当社の事業活動が影響力を持つ重要な人権課題の一つと捉え、人権方針に明記しています。また、人権デューデリジェンスにおいては 「先住民族の土地・権利の尊重」についての顕在的・潜在的リスク、および管理体制の評価を行っており、必要に応じて是正措置を検討するプロセスを持っています。
詳細は、「人権に関する考え方」をご参照ください。
■サプライチェーンにおける考え方・取り組み
当社グループは、「サステナブル調達方針」に基づき、サプライチェーンに対する具体的な取り組み内容として、「公正取引・倫理」「人権・労働」「防災・安全衛生」「環境の保全」「品質・製品安全性」「情報セキュリティ」「社会貢献」「事業継続計画」「サプライヤーの管理」の9つの項目にまとめた「サステナブル調達ガイドライン」を作成しました。
本ガイドラインの「環境の保全」においては、生物多様性に関する取り組みに言及し、取引先(サプライヤー)の皆様に対し、本内容についての理解と賛同を要請するとともに、本ガイドラインに準拠した取り組みを求めています。
詳細は、「サプライチェーンマネジメント/サステナブル調達」をご参照ください。
■管理・報告体制
生物多様性に関するリスク評価結果や、人権デューデリジェンスの実施結果、サステナブル調達ガイドラインに基づくサプライヤーの評価結果はサステナビリティ戦略会議に報告され、重要性の高い情報については取締役会へも報告されます。
リスクと影響の管理
自然関連の依存と影響に関するリスクと機会の特定および評価プロセス
■評価プロセス
当社グループでは、自然に関する事業のリスクと機会を以下のプロセスで評価しました。
はじめに、ENCORE※1の情報による自然への依存や影響の度合い、リスクを把握したのち、関連するリスクが顕在化した外部事例の調査を実施しました。この調査結果に基づき、重要課題を決定しました。
続いて、IBAT※2等のツールを用いて各課題に関するバリューチェーン上の優先地域※3と、それら地域ごとの重要課題を特定し、最後に優先地域における対応策の実施状況を整理しました。
※1 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposures):企業の自然への影響や依存度の大きさを把握するためのリスク評価ツール
※2 IBAT:国連環境計画(UNEP)等が参加する生物多様性プロジェクト「IBAT Alliance」で開発されたデータベース
※3 優先地域:TNFDが定義する「要注意地域」に相当する場所、ハイリスク地域
自然関連リスクと機会の管理プロセス、全社的なリスク管理
■リスクマネジメント
当社グループは「グループリスクマネジメントの強化」をマテリアリティの一つと位置付け、事業活動を通じて発生する一切のリスクを把握し、様々なリスクを適切に管理し損失の極小化を図る体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを通じてリスクマネジメントの充実に努めています。
自然関連のリスクと機会のビジネスへの影響
重要な自然関連リスクと機会
■自社の事業活動と自然(依存と影響)との関係性の把握
TNFD対応にあたり、当社グループの石油開発事業、石油事業、石油化学事業、電気事業、再生可能エネルギー事業における自然関連のリスクと機会をスクリーニングしました。自然関連のリスク評価ツール(ENCORE)を用いて、当社関連事業にとって重要と考えられる自然関連の依存と影響について自然関連テーマごとに評価し、ヒートマップを作成しました。
自然関連の依存と影響のヒートマップ
※数値は、ENCOREのリスク項目の5段階リスクレベルを数値化し、項目ごとに加点したもので数値が大きいほど影響度が高いことを示しています。
この結果を踏まえ、TNFDへの初期対応としては、事業規模(売上規模)の大きい石油開発事業、石油(精製・貯蔵)事業、石油化学事業をLEAPアプローチに沿った分析対象に選定しました。
■自然関連の重要課題選定
重要課題を具体化するにあたり、ENCOREを用いた依存と影響の評価に加え、新たな規制の動きや企業に対する自然影響の批判など、バリューチェーン上の事業リスクの事例を調査しました。また、関連する自然関連テーマとバリューチェーンとの関係性を整理しました。
これらの調査・分析の結果を踏まえ、ENCOREによる自然関連リスクの分析結果を縦軸「ステークホルダーの関心」で評価、当社におけるリスク重要度評価結果を横軸「自社事業との関係性」で評価し、ここに「先住民族・地域住民の権利」をテーマに加えて、自然関連リスクをマテリアリティマップに整理しました。
このマテリアリティマップにより、当社グループにおける自然関連の重要課題を「気候変動」「周辺生態系」「水質汚染」「天然資源の採取・枯渇」「土地利用・開発」「土壌汚染」の6項目に特定し、地域分析を実施しました。
自然関連のマテリアリティマップ
重要課題の地域性分析
■重要課題に関する事業リスク
当社グループにおける自然関連の重要課題への対応策を検討するため、重要課題に関連するリスクの発生可能性が高いバリューチェーン上の位置から対象拠点を特定し、その地域におけるリスク評価を実施しました。
重要課題の分析においては、特に原油・石油の漏洩事故による事業リスクのインパクトが大きいと想定されるため、「直接操業を行う主要な拠点」に対して、原油漏洩を想定した地域性分析を実施しました。
なお、「気候変動」、「天然資源採取・枯渇」については地域差が発生しないこと、淡水利用が少ないことから地域性分析の対象外としました。
バリューチェーンと自然の重要課題と事業リスクの状況
■重要課題に関する優先地域の特定
原油・石油漏洩を想定した影響について、当社の主要な操業地である海上油田においては200km内、国内沿岸域の事業所は30km内の範囲で、直接操業拠点の位置情報から生物多様性上の重要地域の確認を行いました。
<沿岸域および海上の拠点>
生物多様性リスク測定ツールIBAT、海洋生物の生息分布ツールOcean+ Habitat※4を用いて、生物多様性リスクを評価し、特に自然影響度合いが高いとされる優先地域分析を行いました。その結果、アブダビ首長国沖、北海道、千葉県、三重県、大阪府に位置する6拠点について、周辺に生物多様性上の重要エリアに含まれることが分かりました。
※4 Ocean+ Habitats:世界中の海洋生息地の健全性、分布、変化に関する情報、海洋生態系の保全と修復に役立つ実用的なデータを提供するプロバイダ
<地域性分析のイメージ(IBAT)>
<内陸域の拠点>
生物多様性リスク測定ツールIBAT、水リスクの評価ツールWater Risk Filter※5を用いて、直接操業拠点のうち、生物多様性上の重要地域や周辺の水質汚染レベル等の情報から自然関連の重要課題を評価し、優先地域の特定を行いました。
その結果、内陸域の拠点には周辺に生物多様性上の重要エリアに含まれる拠点がないことが判明しました。
※5 Water Risk Filter:WWF(世界自然保護基金)とドイツ企業が開発した各拠点の地域の水リスクを評価するツール
以上の結果から、アブダビ首長国沖と国内国内5拠点の計6拠点について、生物多様性・水質汚染・土壌汚染、サンゴ・マングローブ生息地における優先地域が存在するため、優先地域と特定しました。
バリューチェーンの地域性分析による評価
※ KBA(Key Biodiversity Area):生物多様性保全の鍵となる重要な地域
対応策の検討
■重要課題の対応策
優先地域として特定した6拠点においては、事業継続上、社会的影響が大きいと想定される原油漏洩による自然影響のリスクについて、これまでの事故発生時の影響低減に関する対策や漏洩防止策など、現段階で様々な対策が講じられていることを確認しました。
今後、操業や周辺環境に変化が生じた場合、必要に応じて追加の対応策を検討します。
■再生可能エネルギー事業への対策
再生可能エネルギー事業について、当社グループで風力発電事業を行うコスモエコパワーでは、法令に基づき、事業実施前段階で環境アセスメントを実施し、運転開始後は、環境アセスメント結果の事後調査や環境管理を徹底して行っています。
このことから、自然への影響リスクが抑制されていると考えられますが、必要に応じて、地域分析の検討を行い、事業影響の分析の範囲を拡大していきます。
指標と目標
定量指標
当社グループでは、 「気候変動」を自然関連課題においても重要課題として認識しており、TCFDに関するページにて、指標を集約して開示しています。
詳細は、「気候変動への対応(TCFD提言への対応)」の指標と目標をご参照ください。
気候変動への対応(TCFD提言への対応)
■TNFDグローバル中核開示指標
TNFDでは、自然への依存と影響に関する9つの指標と、自然関連のリスクと機会に関する5つの指標の合計14の指標がグローバル中核開示指標として選定され、これらの指標が報告されることを推奨しています。
依存と影響のグローバル中核開示指標に関する当社の開示状況は次の通りです。
依存と影響に関するグローバル中核開示指標
開示が困難な指標については、データの収集やより詳細な分析を実施することで開示の拡充を図る予定です。併せて、リスクと機会に関するグローバル中核開示指標についても、今後の調査で開示の検討を進めてまいります。
化学物質の管理、排水量、排水汚濁負荷量、大気汚染負荷量等については、「環境負荷低減への取り組み」を、実績値については、「ESGデータ集」の該当項目をご参照ください。
定量目標
■国際的な目標への取り組み
当社は、「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、「経団連生物多様性宣言・行動指針」が掲げる企業が果たす行動指針9項目を参考に活動を推進しています。
また、2023年10月にTNFDフォーラムへ、2023年11月に環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。
「30by30」とは、2030年までに地球の陸地と海洋の30%以上を保護地域として効果的に保全するという目標で、生物多様性の損失を食い止め、自然をプラスに増やす「ネイチャーポジティブ」に向けた取りくみです。本アライアンスへの参加を通じ、30by30目標達成に貢献すべく、今後も生物多様性・自然資本の保全の取り組みをより一層推進していきます。
TNFDのグローバル中核開示指標に沿った指標および目標の設定についても、検討を進めていきます。
産油国での生物多様性の保全活動
コスモエネルギー開発では、環境保護と天然資源の持続可能な利用の促進に、継続的に取り組んでいます。
コスモエネルギー開発のグループ会社であるアブダビ石油が操業するムバラス島は、非常に美しい海に囲まれた地域で、特に環境への配慮が求められています。海洋保護区内で働くことの責任を理解し、生態系とそれに依存する野生生物を保護するために、効果的な管理と監視プログラムを実施しています。
原油生産の現場であるムバラス島では、ムバラス島内における自然保護活動も会社の重要な活動方針と位置づけ、自然環境保護活動として、マングローブの植林をはじめとする緑化や海洋でのサンゴの保護、海藻の繁殖、希少種であるオスプレイ(みさご)の保護など幅広い環境保護活動を積極的に行っています。
COSMOエコ基金での生物多様性に関する活動
COSMOエコ基金では、活動テーマに「生物多様性の保全」の項目があり、里山保全活動や生物多様性を体感できる森づくりなどのプロジェクトを支援しています。
活動内容については、COSMOエコ基金プロジェクト紹介をご参照ください。