イノベーションへの取り組みにおいては、従業員によって創造される知的財産が重要な経営資源となります。
当社は、第7次連結中期経営計画(2023年度~2025年度)において、「第7次中計の基本方針」を策定しました。
当社の「第7次中計の基本方針」を受けて、当社の知的財産活動の具体的な取り組みは以下の項目となります。
1.収益力の確保
1-1.製油所の高稼働、高効率操業の実現
1-2.マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化
1-3.石油開発の生産量最大化
2.成長に向けた New 領域の拡充
2-1.グリーン電力サプライチェーン収益基盤確立
2-2.日本初の国産SAF量産化
2-3.EV化を見据えたモビリティ事業の拡充
2-4.機能化学品の収益拡大
コスモエネルギーグループは、上記の取り組みから得られる成果については、可能なものから特許権、商標権などの知的財産権により保護し、それをもって、将来の企業価値の向上に貢献していきます。
1.収益力の確保
1-1.製油所の高稼働、高効率操業の実現
世界は脱炭素、カーボンニュートラルへの動きが確実に進むと考えられますが、その間も石油から得られる燃料油、潤滑油や石油化学製品原材料の需要に対し、それらを安定的に供給する必要があります。
コスモ石油の各製油所は、需要と供給のバランスを重視した戦略の下で、安全かつ安定的な操業のための、専門人材の育成強化、高度なリスクアセスメントの実施、先進技術の実装等の取り組みを進めてきました。
2016年1月からは、全社統一のマネジメントシステム「操業マネジメントシステム(OMS)」 を運用開始しています*。OMSは、安全操業・安定供給の実現に不可欠な23の要求事項で構成される取り組み方針を定め、それを基に本社と製油所がそれぞれの取り組みと連携を強化する仕組みです。
この仕組みの導入と製油所従業員の活動により、2021年4月には千葉製油所が、2022年8月には四日市製油所がそれぞれ特定認定事業者(スーパー認定事業者)に認定されました。
一方で、安全操業、効率的操業を目指すうえで、様々な技術的アイデアを創出し、その成果を実施する権利を保護するため、下記を例とする特許出願・権利化を進めてきました。
特許第5342250号:バルブ管理システム
特許第4792484号:石油タンク用泡消火設備
等
今年度からの第7次連結中期経営計画では、更なる製油所の安全と効率的操業よる石油製品の安定供給、エネルギー効率を意識した供給を図るべく、ITやDXを活用した、操業管理システムの構築と開発と、その成果を実装するうえでの権利を保護するため、下記を例とする特許出願・権利化を進めていきます。
特開2021-184580号:非防爆機器管理システム及び非防爆機器管理方法
等
また、石油精製では、これまでに培ってきた3つのコア技術(触媒技術、石油留分活用技術、環境技術)を基盤として、環境を意識した石油製品の開発や触媒を中心とした製造技術の高効率化に取り組んできました。
そしてその成果は、実施権の確保、活用を目的として、下記を例とする特許出願・権利化を進めてきました。
特許第6600912号 :重質炭化水素油の水素化処理触媒及び重質炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法
特許第6632065号:炭化水素油の接触分解触媒、炭化水素油の接触分解触媒の製造方法および炭化水素油の接触分解方法
特許第7039266号:携帯用排水処理評価装置および排水処理評価方法
特許第7189823号:流動接触分解装置の原料油熱交換器の洗浄方法
特開2022-154057号:情報処理方法、反応温度算出装置、反応温度算出プログラム、及びコンピュータの非一時的可読記録媒体
等
これからもコスモ石油中央研究所、各製油所やグループ会社の丸善石油化学とともに、石油の高効率活用や環境負荷低減に向けた技術の開発、さらには新たな石油化学事業の創出を目指し、研究開発に取り組んでいきます。
1-2.マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化
燃料油販売においては、多様な顧客ニーズに対応する、ブランドや、IT、スマートフォンなどのアプリを活用した商品やサービスの開発により、他社に先駆けた価値を提供していることが強みです。「カーライフスクエア」アプリ*の開発、累計100,000台を突破した「コスモMyカーリース」など、カーライフの多様化に対応しています。またサービスステーションにおける商品の決済において、QRコード※を提示するだけで燃料油代金の支払いができるアプリ決済サービス「コスモSSPay」を自社のスマートフォンアプリへ搭載して提供を開始するなど、便利なサービスインフラを開発し燃料油販売にも寄与しています。これらの成果についても、実施権の確保、活用を目的として、特許出願・権利化、商標登録を進めてきました。
今後ともお客様の利便性向上を図り、当社のプラットフォームとしてアプリを展開してまいります。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
特許第7128921号:燃料油の販売方法および燃料油の販売システム
特許第6748758号:車検費用の提供システムおよび車検費用提供方法
特許第6553789号:車両の提案方法、提案装置、提案システムおよびプログラム
等
また、サービスステーション運営の効率化や安全性の向上を目指し、AIを活用したシステム開発も進めており、それらに関連したシステムも知的財産権化を進めています。
特許第7061176号:販売員への販売指示提案提供システムおよび方法
特許第6990286号:購入履歴の取得システムおよび方法、およびそれらを用いた顧客データベースの更新システムおよび方法
特開2020-83377号:給油制御システム
等
1-3.石油開発の生産量最大化
脱炭素、カーボンニュートラルへの世界的な動きのなかであっても、石油から得られる燃料油、潤滑油や石油化学製品原材料の需要に対し、それらを安定的に供給する必要があります。
コスモエネルギー開発は、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国、カタール国において、原油の自主開発・生産を行っています。
石油開発において環境負荷を低減する方法の1つとして、採掘した原油を保管しているタンク中に生じるスラッジから、有用な油分を回収し、結果として、産業廃棄物であるスラッジを削減し、有用な油分をより多く生産することが考えられます。
そこで、コスモ石油は、原油スラッジ中の油分の処理に関する特許権を取得し、その上でアブダビ石油および独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とともに、スラッジ削減方法の実証試験を行いました*。
特許第6136042号:原油スラッジ中の油分の処理方法
2.成長に向けた New 領域の拡充
2-1.グリーン電力サプライチェーン収益基盤確立
第7次連結中期経営計画においては、次世代のエネルギー供給、グリーン電力サプライチェーン強化を進めます。
グリーン電力サプライチェーンの主要事業の1つである、風力発電事業*においては、陸上、洋上ウインドファームの開発とともに、風力発電電力の安全安定、効率的供給のための、装置監視・保全管理システムの開発も検討しています。コスモエコパワーではこれまでにも、風力発電装置の検査方法、監視システムなどを開発し、それらの成果については、特許出願・権利化を進めてきました。
特許第6420451号:風力発電機用ブレードおよび風力発電機用ブレードの検査方法
特許第6185541号:風力発電機用ブレードの検査方法
特許第6006706号:風力発電用風車の監視システム、風力発電システム、風力発電用風車の監視方法及び風力発電用風車の監視プログラム
等
今後もIT、AIを活用した効率的な検査方法や監視システム開発を進め、特許による権利化により、競争力と企業価値向上を目指します。
2-2.日本初の国産SAF量産化
当社グループは、これまでも環境にやさしい石油製品の供給への取り組みを進めてきました。その1つとして、国際海事機関(IMO)の船舶用燃料の硫黄規制を受け、低硫黄船舶用重油の生産と供給を開始しました。
さらに今後は、気候変動の視点をより一層取り入れた経営計画を策定し実行していくことが、地球や社会、そして我々の持続的な発展に不可欠であると認識しており、2021年5月に「2050年カーボンネットゼロ」を宣言しました。
2022年度は、国産初の持続可能な航空燃料(SAF;Sustainable Aviation Fuel )の量産化を目指した検討を開始しました*。そこでは、プラントの安定操業、ジェット燃料の品質管理技術を活用していきます。またその成果は、実施権の保護、活用を目的として、特許出願・権利化を進めていきます。
2-3.EV化を見据えたモビリティ事業の拡充
コスモ石油マーケティングは、再エネとEVをワンストップで提供できる「コスモ・ゼロカボソリューション」をリリース*しました。地域の特約店と一体となって法人、自治体の脱炭素への取り組みを支援する、新たな事業です。
さらに、これに関連して、例えば下記の特許権に記載の、各住戸などが有する太陽光発電設備と、多くのEVのバッテリーとを組み合わせ、太陽光発電電力の需給バランスを調整しながら、そのEVを希望する契約ユーザーへ貸し出す仕組み、を例とするビジネスシステムや、サービス名称については、特許権や商標権を取得し、今後も知的財産権化を進めていきます。
特許第7001732号:電力需給バランスを調整させる方法
商標登録6535700号:コスモ・ゼロカボソリューション
商標登録6535701号:ゼロカボ
商標登録6535702号:コスモ・ゼロカボソリューション(ロゴ)
等
2-4.機能化学品の収益拡大
第7次連結中期経営計画においては、高付加価値な石油化学製品事業の開発・拡大を図ります。
グループ会社の丸善石油化学では、機能化学品である半導体集積回路生産用のレジスト用ポリマーを開発、供給*しています。今後も様々なニーズに合わせた商品開発や生産技術開発を進めます。
特許第7119066号:新規の二官能(メタ)アクリレート化合物および重合物
特許第6815779号:ヒドロキシスチレン系重合体およびその製造方法
等
また、潤滑油メーカーであるコスモ石油ルブリカンツでも、その商品開発技術を応用して、電子部品の発熱体と放熱部品の隙間を埋め、接触熱抵抗を低減することで発熱体の冷却を促進する機能性材料*の開発を行っています。
スーパーコンピュータ「富岳」へのサーマルグリース採用について|プレスリリース|コスモ石油株式会社 (cosmo-energy.co.jp)
特許第7460552号「硬化性組成物及び硬化物」
特許第6263042号:基油拡散防止性能を有する熱伝導性グリース
特許第5944306号:高熱伝導性グリース
今後もこれらの取り組みにおいて生まれる技術やアイデアは特許、商標などの知的財産権により保護し、これをもって事業の実施保全と企業価値の向上に貢献していきます。