循環型社会に向けて
循環型社会の実現に向けて新たな収益源を創出するとともに、Scope3の排出量削減に向けて、例えば、余剰基材や燃料を炭素材原料へ変換する炭素固定化技術や、既設の石油精製装置を活用した廃プラスチックのリサイクル方法の開発に取り組んでいます。
石油コークスを原料とした炭素材原料
研究開発部門では、重質油熱分解装置(コーカー)から副産される石油コークスから、代表特性である黒色・軽量・不錆に加え、炭素骨格の構造制御することで、石油コークスの電気特性を変化させる技術を確立しました。一般的な炭素フィラーは導電性を示しますが、独自の構造制御技術により絶縁性から微導電性、導電性と任意の電気特性を持った炭素フィラーの開発に成功しています。特に、黒色・絶縁性と黒色・微導電性を示すフィラーは従来技術で実現困難であり、半導体や電子材料への展開が期待されています。
余剰基材を活用した炭素材原料
研究開発部門では、余剰基材を原料とした炭素材製造に取り組んでいます。例えば、現在、製油所の装置を運転する中で発生するオフガスは自家用燃料として使用されていますが、より高付加価値の炭素材へ変換する技術を検証しています。炭素材製造の過程で生成する水素(ターコイズ水素)は精製過程で理論上CO2を排出しないため、次世代エネルギーである水素製造等の社会実装にもつながると見込んでいます。
廃プラスチックのケミカルリサイクル
ケミカルリサイクル技術は、これまでリサイクルが難しかった廃プラスチックにも適用できる可能性があり、循環型社会の実現において注目されている技術です。研究開発部門では、NEDOの「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」事業に参画し、既設の製油所設備を有効利用した新たなケミカルリサイクル技術の開発に取り組んでいます。石油精製装置は大規模な処理能力を有することから、そのポテンシャルを活かすことで廃プラスチックのリサイクル推進に貢献できると考えています。
用語集
絶縁性
電気を遮断するまたは通しにくくする性質。ゴムやプラスチックは一般に絶縁性を示す。
微導電性
電気をゆるやかに流す性質。静電気に敏感な物質を保護するために良く用いられる性質。半導電性、
静電気拡散性、中抵抗などとも言う。
Scope1, 2, 3
サプライチェーン排出量のうち、Scope1とScope2以外の間接排出量を示す指標。Scope1は、事業者自らの燃料の燃焼や工業プロセスに伴う排出(直接排出)、Scope2は、他社から供給された電気・熱・蒸気などのエネルギー使用に伴う排出(間接排出)を指す。