COSMO

コスモエネルギーホールディングス 取締役常務執行役員CHRO 竹田純子 同常務執行役員CDO ルゾンカ典子「Vision 2030」を実現し企業価値を高める VOL.2 HRX戦略とDX戦略 HRX、DXを推進し、経営基盤を変革する。社員の「ココロも満タンに」

「『Vision 2030』を実現し企業価値を高める」のシリーズVOL.2は、コスモエネルギーホールディングスのHRX(ヒューマンリソーストランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を紹介する。経営基盤変革のアクションプラン遂行を担う、同社取締役常務執行役員CHRO(Chief Human Resource Officer)竹田 純子氏と、常務執行役員CDO(Chief Digital Officer)ルゾンカ 典子氏に聞いた。

HRX戦略

他律・受動的から自律・主体的へ現状維持ではなく成長意欲を醸成

――HRXでは「人が活き人を活かす人材戦略」の推進を掲げています。

 

竹田  2030年に向けてコスモエネルギーグループは大きく3つの施策に取り組んでいます。既存の石油事業の競争力強化や低炭素化の推進がまずひとつ。加えてSAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)に代表される次世代エネルギーの拡大、そしてグリーン電力サプライチェーンの強化です。これらの施策について着実に成果を上げ、しっかりとした事業の柱とするためにも人材改革は欠かせません。

 

人事異動ひとつとっても、これまでは会社主導で社員は受け身で、何とかやってきましたが、これからはそうはいきません。新しい分野へのチャレンジも必要で、社員が主体性を発揮し、自らのキャリアを切り開く姿勢が肝心。それなくして成長は見込めません。他律・受動的から自律・主体的へと姿勢を転換し、現状維持ではなく成長意欲を醸成する。最終的には、中長期のビジョン「Vision 2030」を実現する人材集団の形成を目指しています。

他律・受動的から自律・主体的へ 現状維持ではなく成長意欲を醸成

人的資本投資を約2倍に増額上から下まで全組織で意識改革

――具体的なアプローチを教えてください。

 

竹田  「Vision 2030」を実現する人材集団を形成するためには、「変革・挑戦志向」「成長意欲」「自律的なキャリア形成」がポイントだと考えています。業務の実践、特に変革へのチャレンジによって育成・成長を促すとともに、DXリテラシーの向上や自律的な能力・スキル向上を強力に進めます。これらの施策による人的資本投資は、従来の約2倍である従業員1人あたり18万円を見込んでいます。この投資で社員の成長意欲、自律性を促し、会社は成長の結果や能力・スキルを見える化し、人材集団の拡充を推し進めます。

 

――「ジョブチャレンジ制度」の拡充もその一環ですね。

 

竹田  ジョブチャレンジ制度は一種の社内転職制度ですが、従来はチャレンジしたい社員が希望部署を自分で探す必要がありました。そこで社内の各部長が自分の職場の魅力をアピールし、人材を公募する場をイントラネットに設け、よりチャレンジしやすくしました。同時に人事評価や昇進でも、チャレンジした人を前向きに評価するよう改善。各部長を対象にそのためのマインドセットを求める研修などを新たに実施しました。上から下まで全組織で意識改革し、新たな価値を生み出す力へとつなげる人材開発を推進します。

人的資本投資を約2倍に増額 上から下まで全組織で意識改革

新卒採用の半数以上が女性 シニア社員の活躍促す賃金制度

――女性やキャリア人材の採用など多様性の拡充といった面でも積極的です。

 

竹田  男性が多い会社ですが、私が人事担当になった際に、女性の採用を促進し、新卒採用については技術系を含め50%以上を女性とするようにしました。キャリア人材の採用も近年、積極的に進めており、直近では年間70人以上を採用しています。キャリア採用社員が一定規模になることで、人材の多様化が進み、組織の活性化にもつながっていると感じます。シニア社員も重要で、定年までと同じ職責を担う場合には賃金も同様とし、活躍してもらっています。組織風土の面でも社員のエンゲージメントを高め、パフォーマンスの最大化へとつなげていきたいですね。

コスモエネルギーホールディングス取締役常務執行役員 CHRO 竹田 純子


コスモエネルギーホールディングス取締役常務執行役員 CHRO 竹田 純子

1990年コスモ石油(現コスモエネルギーホールディングス)入社。2022年6月から現職

――今後の意気込みと、日経電子版読者へメッセージをお願いします。

 

竹田  「変革・挑戦志向」「成長意欲」「自律的なキャリア形成」を実践する人材集団の形成と申し上げてきましたが、そのためには常に様々なことに興味を持つことが全てのスタートだと私は考えています。目を閉じ、耳を塞いでしまうと、興味へのきっかけを自ら失うことになりますが、周囲を観察し、耳をすませば、そこで見聞きしたことが後々の仕事に生きることもあります。興味を失わずにいればチャレンジも可能で、成長への一歩となります。安全操業・安定供給により社会を支える不断の努力をしつつ、コスモエネルギーグループが未来のエネルギーも支える企業であるために、大いに挑戦し、時には失敗も経験することで、常に、変革、成長する人材となってほしいと思います。健康経営にも配慮しながら、社員の「ココロも満タンに」していきます。

DX戦略

「データ活用コア人材」900人創出5つの「C」推進で自分ゴト化を促す

――コスモは、どのような方針でDXを推進していきますか。

 

ルゾンカ  コスモはこれまで、エネルギー供給者として社会のインフラを支えてきました。しかし、外的環境が大きく変わっていく今、時代に沿ったビジネスモデルへの変革を迫られています。その実現に、DXは欠かせません。私は着任後まず、礎となるDXビジョンが必要と考え、関係するメンバーはもちろん、あちこちの現場にお邪魔し、約5カ月にわたり喧々囂々(けんけんごうごう)の議論を重ねました。こうして誕生したのが「Cosmo’s Vision House」です。

Cosmo’s Vision House

「デジタル・ケイパビリティ」の向上と、「チェンジマネジメント」の推進を2つの核に、社員一人ひとりのやる気を促し、自分ゴト化してもらうための意識改革を促す5つの指標「Cosmo's 5C」を定めています。当初「C」は、Chance(機会)、Challenge(挑戦)、Change(変化)の3つだけでしたが、現場の皆さんのコミュニケーションを大切にしている姿勢と、仕事へのこだわりに感動し、Communicate(対話)とCommit(こだわり)を追加しました。

 

――具体的な進め方を教えてください。

 

ルゾンカ  コスモのDXは、一部のテック人材だけに頑張ってもらうのではなく、全員参加型を目指しています。その第一歩として、第7次中計で「データ活用コア人材」900人創出を掲げました。約7000人の社員の仕事の仕方を変えていくには、まずデータを活用して物事を考える力を身に付けることが重要です。もちろん最低限の知識は必要ですが、「使ってなんぼ」。講習を受ければよしではなく、実装して初めて認定する制度にしています。

 

ただし、データを活用するといっても過去のデータを全て理解することではなく、今できるところから始める発想への転換も必要です。技術はどんどん進化していくので、フットワーク軽く、ドキドキ感とワクワク感を持って、楽しみながらデータを活用してもらいたいですね。

コスモエネルギーホールディングス常務執行役員CDO ルゾンカ 典子


コスモエネルギーホールディングス常務執行役員CDO ルゾンカ 典子

外資系金融機関などを経て、2021年11月コスモエネルギーホールディングス執行役員CDOとして着任。2022年4月から現職

製油所をデジタルプラント化「イネイブラー」として地域貢献

――製油所など既存事業で、どのようにデジタル化を実現していきますか。

 

ルゾンカ  グループ内でDXのアイデアを募集する社内プログラム「CDO CUP」を2022年から始めました。2025年度末までの3年間に60の実装件数を目指しており、既に製油所のデジタルプラント化に関するアイデアが多数集まっています。現実空間を仮想世界で再現する「デジタルツイン」やドローン、四足歩行ロボットなどを採り入れることで、製油所の異常予兆検知や遠隔監視を実現し、安全安定操業に貢献するアイデアです。なるべく短いサイクルで実現に向けて進むよう、コーポレートDX戦略部がサポートしています。

 

――DXを生かし、新規事業を創出する構想はありますか。

 

ルゾンカ  コスモは2600以上のサービスステーションを展開しており、エネルギーとコミュニティーは切っても切れない関係にあると実感しています。地域ごとに地理的条件や生活形態などが異なり、生活をより安全に豊かにするエネルギー供給の方法は異なるでしょう。コスモでは「コミュニティ・イネイブラー(実現に向け後押しする人)」という言葉を使っていますが、コスモならではのエネルギーに関する知見やノウハウを生かし、地域社会に貢献する何かおもしろいことができるのではないかとワクワクしているところです。実現に向け、まずは部門を超えてデータを活用できるよう、データのオーケストレーションに力を入れて取り組んでいます。乞うご期待です。

デジタルを活用したビジネスモデル変革

「デジタルの力とエネルギーで コスモだからできることがある」

――今後の意気込みと、日経電子版読者へのメッセージをお願いします。

 

ルゾンカ  コスモに着任してまだ2年ほどですが、経営トップの本気度に加え、会社全体のスピード感、社員の仕事に対するこだわりやブランドへのプライドをひしひしと感じています。皆が同じ考え方をする必要はなく、一人ひとりがやりたいこと、できることを一つの塊にして力にしていく。それを会社の成長の原動力として次の世代につなげていきたい。デジタルの力とエネルギーで、コスモだからできることがある。ここが正念場だと思っています。

 

同時に、DXを推進し会社を変革するには多様性が欠かせないと考えています。エネルギー業界に限らず、他社との協業もウエルカムです。ぜひお声がけください。最近、特に実感していることですが、DXの「D」で重要なのは、泥臭いの「D」なのかもしれませんね。

(日本経済新聞電子版タイアップ掲載期間:2023年12月8日~ 2024年1月7日)